ピロリ菌の除菌治療が保険適応拡大となりました
厚生労働省は2013年に「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」に対するピロリ菌除菌療法を保険診療で行うことを決めました。
1994年にすでに世界保健機構(WHO)は疫学的調査からピロリ菌を確実な発がん物質と認定しておりました。胃の中に生息するこの細菌は、胃がんだけでなく、慢性胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を引き起こすことが分かっております。
2000年から我が国でも「胃潰瘍、十二指腸潰瘍」の方は保険診療でのピロリ菌の感染診断および治療を受けることができておりました。
今回は胃潰瘍、十二指腸潰瘍のみならず、慢性胃炎にまでピロリ菌治療の保険適用が拡大されたということなのです。ピロリ菌による慢性胃炎の人を除菌することで胃がんの予防効果があることが証明されたためと考えられます。
ピロリ菌検査
ピロリ菌の検査は、7種類あり以下の通りです。
尿素呼気試験が1番精度の高く、ピロリ菌の診断に最適です。2番目は便中抗原と考えます。それぞれの特性を考慮し、状況により検査を組み合わせ診断します。
1.尿素呼気試験
13C-尿素を含んだ検査薬を飲む前後に容器に息を吹き込んで呼気を調べる検査です。ピロリ菌の産生するウレアーゼが胃内の尿素を二酸化炭素とアンモニアに分解することを利用し、呼気中の13C-二酸化炭素の増加を測定する方法です。体への負担がなく、かつ精度も高い検査法です。
2.便中H. pylori抗原検査
ピロリ菌に対する抗体が、生きた菌だけでなく死菌なども抗原(H. pylori抗原)として認識し、特異的に反応することを利用し、便中H. pylori抗原の有無を判定します。体への負担が全くなく本菌の存在を判定できます。
3.血中・尿中抗H. pylori IgG抗体検査
ピロリ菌に感染すると、本菌に対する抗体が患者さんの血液中に産生されます。血液や尿を用いてこの抗体の量を測定し、ヘリコバクター・ピロリ抗体が高値であれば本菌に感染していることが認められ、ヘリコバクター・ピロリ感染の有無を検索するスクリーニング検査です。除菌後の抗体価低下には1年以上かかるケースがあるので、その点に注意が必要です。
4.内視鏡検査
内視鏡の際の胃粘膜の所見より判定します。発赤、白色粘液の付着、ひだの肥厚という所見があるとピロリ菌感染を疑います。
5.病理組織学的検査
内視鏡にて胃から摘み取ってきた粘膜の一部を HE(ヘマトキシリン-エオジン)染色あるいはギムザ染色、免疫染色により染色し、顕微鏡で観察する方法です。直接観察することによりピロリ菌の存在を診断でます。また、培養不能でウレアーゼ活性ももたない coccoid form(球状菌)の状態でも診断できるという長所があります。
6.迅速ウレアーゼ試験 (rapid urease test, RUT)
尿素とpH指示薬が混入された検査試薬内に、内視鏡時に胃粘膜より摘み取った組織を入れます。胃粘膜にピロリ菌が存在する場合には、ウレアーゼにより尿素が分解されてアンモニアが生じます。これに伴う検査薬の pH の上昇の有無を、pH指示薬の色調変化で確認します。
7.培養法
内視鏡の際に胃粘膜の一部を摘み取り、その組織から菌を分離培養することにより、ピロリ菌の存在を確認します。この検査法の長所は菌株を純培養し入手できる点であり、この菌株を薬剤感受性 (MIC) 測定や遺伝子診断など他の検査に利用することができます。
ピロリ菌を除去について
ピロリ菌は薬で除菌できます
ピロリ菌除菌の副作用
- 胃酸の濃度が上がり逆流性食道炎様症状が増える
- 血液サラサラの薬を飲んでいる人が、胃潰瘍を発症すると止血が困難なため除菌をしておいた方が良い
ピロリ菌は前述のように胃がんの発がん物質であり、親から子供に感染する可能性が高いため、ピロリ菌を除菌することは、胃がんを予防する効果があり、それと同時に、子供への感染を防止することができます。除菌による胃がんの予防効果は胃炎の程度が軽いほど高く、若い人ほど高いということが分かっております。
また、親になる前に除菌することで、子供への感染をブロックできます。ですから、親になる前の20歳頃あるいはそれ以前に一度ピロリ菌の検査を受け、ピロリ菌に感染している人は除菌すると良いです。皆さんが除菌をすることでピロリ菌が撲滅され日本人の胃がん発症がかなり減少することが予想されます。
実際の除菌方法は抗生剤を2種類組み合わせ、酸を抑制する胃薬と一緒に1週間飲むという方法です。1次除菌の成功率は75%、2次除菌は90%です。多くの方が2回の除菌で完全に胃の中からピロリ菌を除去できます。除菌後再感染する率は一年間で0.2%といわれていますので、殆どありません。
除菌の副作用は組み合わせて飲む2種類の抗生剤によるものがほとんどで、一過性の下痢が最も頻度が高いです。症状が強く出る方は出血性腸炎となり、血便が出ることがあります。また、ペニシリンアレルギーのある方は、全身にひどい発疹を起こすことがあります。これらの副作用は、実際服用してみないと出るかどうかわかりませんので、ピロリ菌の除菌による恩恵とその副作用の危険性を天秤にかけるしかありません。
若ければ若い人ほど除菌による恩恵が多いと考えられ、積極的に治療を勧めています。また、年齢の高い人はどうすれば良いかということが専門家の間で議論になっております。高齢の方は脳梗塞の予防のためにアスピリンの等の“血液をサラサラにする薬”を服用する方が多くいます。“血液をサラサラにする薬”は胃潰瘍を起こす危険性を増し、さらに胃潰瘍になった時出血が止まりにくくなり大変危険な状態になることが考えられます。
よって、高齢の方は“血液をサラサラにする薬”を服用開始する前に除菌をすることをお勧めします。
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東京都三鷹市牟礼4-2-14 - 院長
- 山本 薫(医学博士/日本外科学会認定登録医/
消化器病専門医/消化器内視鏡専門医) - 電話
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(内科は10歳以上の方が対象です)
予防接種は3か月齢以上から行います9:00~11:00 / 15:30~17:00:感染症状がない方(健診、ワクチン、高血圧・糖尿病などの常用薬処方、外傷など)
11:00~12:00 / 14:30~15:30:感染症状がある方(発熱、咳、咽頭痛、関節痛、鼻閉、倦怠感、
下痢など)
※感染症状のある方は診察時間を指定しますので必ず電話で予約を取って下さい
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